日誌

思考力をつけるためには?❹

❹「考えるきっかけ」をつくる  ー思考をうながす言葉がけとは?

文部科学省がグローバル化に対応できる人材を育成するため推進しようとしている、小高校生向けの教育プログラムに、国際バカロレアというものがあります。国際バカロレア教育は、世界150以上の国地域にある約5000の認定校で実施され、「なぜだろう?」とくりかえし問いながら、分析を深めていく対話型の授業を特徴としています。多くの卒業生が、起業家など社会のチェンジメイカー(変革者)として世界を舞台に活躍していますが、その認定校の先生が、印象的なことを仰っていました。

「皆、正解を知りたがります。そして、どれが試験に出るのですか、とすぐに聞いてきます。受験勉強では『正解は何だ?』とつきつめていくことが多いからだと思いますが、国際バカロレアでは、『根拠があれば、それは1つの答えである』という考えです。だから『自分の意見はどうなの?』『なぜ?』というところを重視しているのです」

国際バカロレアでは、先生は“教える”というよりも、生徒と共に学ぶ学習者であり、授業はあくまでも子どもが主体。子どもが自分の頭で考え、決断し、行動できる力を伸ばしていくという理念です。考える力は、教えたり指示したりするのではなく、子どもに考えるきっかけを与えることで育めるのです。

 

「考えるきっかけ」をつくるにはどうすればいい?

(1)答えを教えない

 子どもが何かを聞いてきたら、すぐに答えを教えずに「〇〇ちゃんはどう思う?」「なんでだろうね?」と問いかけます。すぐに答えがわからないワクワク感が、子どもの考えるきっかけになるからです。自分で考えようとしないときには、一緒に調べたり考えたりしてあげることで、ただ「答え」を教えるのではなく「学ぶプロセス」を体験させます

(2)質問させる

子どもにたくさん質問をしてもらいます。質問したがらないときには、親のほうから「パパ(ママ)はこう思うんだけど、〇〇ちゃんはどう思う?」などと質問してみます。子どもは親を手本に言葉の使い方を覚えていきます。たくさん質問する子どもは、親も子どもにたくさん質問をしているという調査結果もあります。

(3)あえて反論をする

 ディベートや議論を活性化させる手法で、「悪魔の代弁者」という役割をつくることがあります。これは多数派に対してあえて反論する役割で、子どもに対しても、考えを深めるきっかけをつくれます。子どもの発言に対し、「それって本当かな?」と切り出し、あえて真逆の意見をぶつけてみるのです。

(4)自分でルールを考えさせる

子どもが親の言うことを聞かないのは、納得できていないからです。「〇〇しなさい!」という命令に効果がないときには、それも思い切って考えるきっかけにしてしまいます。親の希望を伝えつつ、賛否両論を考えさせるのです。たとえばゲームばかりしているときは、「目が悪くなるから心配だ」「〇〇ちゃんの話を聞く時間が少なくなるので悲しい」といった親の気持ちを伝えつつ、子どもには、ゲームをすることのメリットとデメリットを挙げてもらいます。そのうえで、どういうルールにするのがいいか、自分で考えさせます。

このプロセスには時間がかかりますが、命令して強制するよりも、子どもが納得したうえでルールを決めたほうが行動は変えやすくなります。