日誌

国語がよくわかっていないことを考える④

4 登場人物の気持ちがわからない?

 文章を読むということは、文字をただ追っていくことではありません。頭の中で情景を思い浮かべたり、登場人物の気持ちを想像したり、文章に込められた作者の思いを読み取ったりしながら読み進めていくという、かなり高度な学習です。

文章の中で活字化されていない「情景」や「気持ち」を読解していくわけですから、子どもたちが難しいと感じてしまうのは当然かもしれません。特に、理科系が得意な子どもたち(男の子が多いですが)が苦戦しています。

理科系の頭脳を持っている子どもの多くは、「修飾」を避けたがります。何事に関しても、事実や要点、あるいは結果を早く知りたいと思うので、気持ちの機微を味わう、行間を読む、文章を膨らませるといった作業を面倒に思ってしまうのです。しかし国語の教科書に限らず、文章とは誰かに何かを伝ぇるためのものであって、その「何か」を読み取ることが、読み手の仕事(あるいは義務)であると言っていいでしょう。

国語のテストでは、「文章から登場人物の気持ちを読み取りなさい」という問題がよく出てきます。このような問題に対して理科系の子どもが苦手意識を持ってしまうのは、登場人物になりきって情緒的に心情を読み取らなければならないことを、面倒に思ってしまうからでしょう。しかし、「読み取る」という中には、文章の中に描かれている心理描写を読み取ることも含まれています。つまり、文章を正しく読めているかどうかが問われるわけです。

得意科目が何であれ、将来進みたい道がどんな分野であれ、文章はいたるところについてまわります。社会科や理科、算数・数学を学ぶときにも読解力は必要ですし、物を買ったときには取扱説明書を読まなくてはなりません。社会人になれば、依頼書や報告書をはじめとしたさまざまな書類に目を通す機会も訪れるでしょう。

このようなときに、書き手の真意や報告内容を正しく読み取ることは基本中の基本。意味を間違って読み取ってしまえば、信用を失くしたり、大きなトラブルに発展したりすることがないとは言えません。

ですから「登場人物の気持ちを読み取る」という学習を通して、あらゆる文章に対応できるような読解力を身につけてほしいと思っているのです。

 

登場人物の気持ちを理解するためのヒント

「物語に登場する人物の気持ちを読み取るのが、なぜそんなに難しいのか」と思われるかもしれません。でも、想像力を駆使して物語の中に入り込み、自分が体験していないことを自分の体験として捉える追体験をするのですから、決して簡単ではありません。とはいえ、その力がつけば、国語の勉強はぐっと楽しくなります。

(1)ごっこ遊びで他人を演じる

『おままごと』は、いわば追体験の一つ。「自分ならこうするだろう」と、架空の家庭を思い浮かべながら演技をします。ヒーローになりきって悪人を倒す、「ヒーローごっこ」も同様です。このような「ごっこ遊び」を通して、子どもたちは自分以外の人物になりきって想像力を膨らませるのです。

学校では、人の「気持ち」を追体験するために、物語の人物に なって遊ぶ『劇遊び』や、やってみたい人物のお面などをかぶってセリフの読み合わせをする『役割読み』、登場人物の気持ちになって日記を綴る『なりきり日記』などで学習しています。

家庭でも、料理中の鍋の中の具材が煮えていく様子を実況中継させてみる、壊れてしまったおもちやの気持ちを代弁してみる、文房具に名前をつけて会話をさせてみる、といった遊びを通して、親子で一緒に「気持ち」を想像することを楽しんでください。

(2)日常の場面で、感情を言語化してあげる

どんなに小さい子どもでも、胸の内には感情を秘めています。ところがその感情をどのように表現するのかよくわからなかったり、適切な言葉が見つからなかったりすることもあります。そこでそのサポートとして、感情を言語化してあげましょう。

例えば、学校から子どもが泣きながら帰ってきたときには、「どうしたの?何があったの?」と問いつめるのではなく、「くやしかったね」「仲直りして、また一緒に楽しく遊べるといいね」のように、子どもの思いを言葉にします。こうした周囲の大人の支えが、子どもの学びを進化させます

(3)追体験の機会を作る

 学校では、人の「気持ち」を追体験するために、物語の人物になって遊ぶ『劇遊び』や、やってみたい人物のお面などをかぶってセリフの読み合わせをする『役割読み』、登場人物の気持ちになって日記を綴る『なりきり日記』などで学習しています。

家庭でも、料理中の鍋の中の具材が煮えていく様子を実況中継させてみる、壊れてしまったおもちやの気持ちを代弁してみる、文房具に名前をつけて会話をさせてみる、といった遊びを通して、親子で一緒に「気持ち」を想像することを楽しんでみてください。