日誌

コミュニケーション力をつけるためには?❽

❽「読み聞かせ」をする -集中しなくても気長に読めばいい

「心を落ち着かせ、言語能力や想像力、情緒を育む」という読み聞かせの効果が、学術的にも明らかになってきています。日本大学大学院の認知神経科学者であった泰羅雅登教授が、読み聞かせをするとき子どもの脳のどこが活性化するかを調べたところ、脳の深部にある、感情や意欲、本能に関係する「大脳辺縁系」という部分であることがわかりました。泰羅教授は、これを「心の脳」と表現し、この心の脳を育めば、こわい、悲しい、楽しい、うれしいといった感情がわかる子どもに育つといっています。心の脳が育つと、さまざまな感情を脳が感じ取り、「また、やろう」とか「これはやってはいけない」といった動機付けがされ、意欲や道徳感にもつながるということです。

また、脳科学者、川島隆太教授の調査では、読み聞かせの時間が長いほど、母親の子育てのストレスが低くなるということもわかっています。子どもについては、読み聞かせによって言葉の発達が進むほか、言うことを聞かない、反抗するなどの問題行動も少なくなったといいます。こように読み聞かせは、心を育て、親子の気持ちを通わせて、落ち着いたコミユニケーションを再後にしてくれます。

 

「読み聞かせ」はどうやってすればいい?

(1)時間を決めて日課にする

夕飯や風呂の後、あるいは寝る前など、読み聞かせのタイミングや時間を決めて日課にします。子どもの本はあっという間に読めます。家事に追われていても、0分手を休めるだけで、短い絵本なら1〜2番は読めます。読み聞かせの時間がきたら、親子で一緒に本の世界にひたり、思いきり楽しみます。

(2)静かな環境で、気楽な気持ちで

子どもが集中できるよう、テレビや音楽は消します。子どもが最後まで集中して聞けないこともありますが、イライラして中断せず、最後まで気長に、いつもどおりに読んであげます。子どもはほかのことに気が散っていても、背中を向けたまま聞いていたりするようです。

(3)ゆっくり、はっきり読む

子どもが耳から入ってくる言葉やリズムをじっくりと味わい、想像をふくらますことができるよう、ゆっくり、はっきり読んであげます。

(4)同じ本を繰り返し読んでもOK

子どもは1冊の本を気に入ると、何度でもその本をくりかえし読みたがります。大人から見ると不思議なのですが、子どもにとってはつねに新しい気づきがあり、回を重ねるたびに自分の力で発見することが増えていきます。

(5)字を覚えることを目的にしない

読み聞かせで、すらすら読めない字を無理に追わされ、本を読むのが嫌になってしまっては本末転倒です。大人が読み聞かせてあげることで、子どもは本を読む楽しさを覚えていくのです。

(6)小学生以降も読んであげる

絵本の読み聞かせというと、赤ちゃんから5歳くらいまでというイメージが強く、小学生になるともう手遅れだと思うかもしれません。ところがアメリカのロングセラー『できる子に育つ魔法の読みきかせ』(筑摩書房)の著者、ジムトレリースによると、子どもは13歳くらいまで「読む力」より「聞く力」に長けているため、聞いた言葉を真似することで言語能力を獲得していくそうです。

読み聞かせは絵本だけに限りません。小学生になっても、本を読んであげることで新しい言葉を学び、さまざまな物事への興味や関心がめばえ、感情が豊かになっていきます。泰羅教授は、学習、思考や言語など、脳の高度な機能に関係する「大脳新皮質」が発達するには、まず脳の奥にある「心の脳」を健全に育む必要があるといっています。読み聞かせはこの脳の奥、子どもの脳の「根っこ」の部分を育ててくれるので、小学生からでも効果は十分に期待できます。

(7)本の選び方は?

絵本の場合、書店で選ぶ際には、見た目の鮮やかさに惑わされないようにします。白黒の本でも、子どもは頭の中で想像しながら自で色をつけていくともいわれ、長く読み継がれている名作はたくさんあります。子どもによい本を選ぶのが難しいときは定期購読を利用したり、「絵本ナビ」のような絵本の情報サイトで試し読みをしたり、評価や感想を参考にして選ぶのもよいでしょう。

児童書の定期購読サービスには、0歳〜小学6年生までを対象としたクレヨンハウスの「絵本の本棚」や、絵本ナビの「絵本クラブ」などがあります。