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体力をつけるためには?❺

❺「好き嫌い」をなくす  -苦手があるのは自然なこと

 味覚に関する研究の世界的権威である理学博士のジャック・ピュイゼ氏は、「誰一人として同じ味に対する同じ反応はない」といっています。4、5歳から7歳(長い場合は9歳くらい)まで、子どもは新しい食べ物を危険なものととらえます。とくに、苦昧や酸味については、「腐った異物」だとして、本能的に受けつけません。たとえば、小学生が嫌いな食べ物の上位を占めるゴーヤ、セロリ、ピーマンなどは、大人にとっては香りや食感を楽しめる食材ですが、多くの子どもにとっては危険な異物として受けとめられます。食べ物の好き嫌いは生まれもった本能的な反応であり、子どものときほど敏感で個人差が大きいのは自然なことです。

「好き嫌い」をなくすにはどうすればいい?

(1)無理強いはしないがあきらめない

 好き嫌いのような本能的な反応には無理に逆らおうとせず、見ただけで嫌がるようなら強制する必要はありません。とくに苦味に対する味覚が育つのはかなり遅いので、子どもが苦い食べ物を嫌うのは自然な反応です。ただし、だからといって食べさせるのをやめるのではなく、2〜3日あけてから、少し味や調理の仕方を変えてもう一度試します。 子どもの味覚を育むには、新しい食べ物に親しむことが重要だからです。ただし、毎回、無理に食べさせようとはせず、食べなくても気にしないで、淡々とくりかえします。生理学的に味覚が変わり始める10歳あたりになると、コショウや塩、野菜も好むようになってきます。苦味の強い野菜には甘めの昧付けをするなどの工夫で、少しずつ昧覚の幅を広げていきます。

(2)味の刺激で脳の発達をうながす

 食べ物の味は、舌の表面にある味蕾という器官でキャッチされ、神経細胞を通して脳に伝えられます。味蕾は8歳から急速に増え、12歳をピークに減っていってしまいます。味蕾が味をキャッチするたびに送られる信号は脳を刺激し、脳の発達をうながします。 脳の発達は、小脳が8歳ごろ、大脳は12歳ごろで完成するといわれています。いろいろな味を経験することで脳が刺激を受けると、「視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚」の五感が研ぎすまされていきます。食べることは、たんなる生存のためだけでなく、脳の発達にもつながっているのです。ジャック・ピュイゼ氏は「刺激が乏しくてつまらない食べものは言葉を眠らせ、言語を衰遇させる」といっています。また、12歳までに基本の味をきちんと体験していない子どもは、成長してから問題行動を起こしやすいという研究結果もあります。とくに味蕾がキヤッチできるのは、食材そのものの自然の昧です。自然の味から基本の「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5つの味を見分けるごとに味蕾の数が増え、味覚力が鍛えられていきます。

(3)大人がおいしそうに食べるのを見せる

 栄養のことだけでいうと、嫌いな特定の食ベ物を食べなくてもほかの食べ物で代替できるので、好きなものだけでお腹を満たしていても、子どもは十分に育ちます。とはいえ、味覚は脳の発達にもつながっているので、その意味では子どもがさまざまな味を経験するのは大切なことです。大人ができるだけいろいろな食材に挑戦し、おいしそうに食べているところを見せると、子どもも新しい食べ物に興味を覚え、チャレンジしてみようという意欲がわきます。家庭では、親が好きでないものは食卓に上りにくい傾向にありますが、子どもに機会を与えるために、大人もさまざまな味に挑戦します。

(4)好き嫌いを克服するための工夫

 みじん切りにして、ハンバーグやカレーなどに入れてしまう、子どもの好きなキャラクターのぬいぐるみや人形を使って応援する、ゆでて苦味を減らすなどがあります。また、苦味や酸味のある食べ物には、甘味や塩味をつける(ホウレンソウにゴマだれ、マーマレードにハチミツ、ゆで卵に塩など)こともよいようです。