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子どものつまずきを考える③ 学習面での壁を考えてみると

3 学習面での壁を考えてみると

 3年生の前半までは、手で数えたり、自分の手で触ったりできる範囲で学習できます。具体性のある学習ですから、子どもも理解しやすいので「具体的操作」と言います。3年生の後半からは、一段階上の「形式的操作」が必要な学習に入っていきます。

 例えば、4年生では「億」の単位が出てきます。「ゼロ」が増えていくことは分かっても、それは理屈でしかないわけです。「十億とはどのくらいの数でしょう」と言われても、子どもたちは実感がわきません。実際の生活で何となく目にする数ですが、実際にはどれくらいなのか具体的なイメージが描けません。

 それを教えるときには、例えばこういうやり方をします。「1ミリを1としてごらん。10は1cm、100は10cm、1000は1m。では、1億なら10万m=100km、10億なら1000km。だいたい東京から韓国のソウルが10億を少し超えるくらいの距離。つまり億とは、そのくらいの数です。

 漢字についても同様です。1年生で習う漢字は、それ自体、単独で意味を持っている「花」「木」「水」「火」というような、具体的でわかりやすく、画数も少ないものばかりです。2年生では、学校や家庭で実際によく使う漢字を習います。「国語」「算数」「理科」「社会」といった教科の漢字が出てくるのもこの頃です。12年生は生活のための言語、つまり「生活言語」が中心です。

 34年生になると、だんだん抽象的な概念を担う漢字が出てきます。単体ではあまり具体的な意味がわからないけれど、「世界」や「理由」のように熟語になってやっと意味がわかる漢字が出てきます。「談」「説」「訓」のように部首「言」(ごんべん)だと言葉に関係があるというように、知っている知識で応用できる漢字が増え、画数も多くなっていきます。学習のための言語、つまり「学習言語」へと移行します。

 56年生になると、普段なかなか使うことのない漢字が急に増えていきます。例えば、「宇宙」という漢字。「宇」とか「宙」などは、めったに使う漢字ではありません。普通の日常ではなかなか出会うことができないので、意識的に読んだり、書いたりしなければ定着しにくいという特徴があります。

 普段からいろいろなジャンルの書物を読んだり、芸術に触れたり、疑問があれば自分で答えを探す行動を起こしたりすることで、語彙を増やす下地はできていきます。また、家庭で会話をするときに言葉を正しく使う習慣をつければ、語彙も増えていきます。そうすれば、新しく出てきた難解そうに見える漢字も、しっかりと自分のものにできるようになるのです。本も読まない、日記も書かない・・・。家庭でも「お母さん、ご飯!」「そこ!」「早く!」というような単語レベルの会話では語彙も育たず、漢字の習得にも苦労するかもしれません。

 小学校中学年から高学年の時期は、子どもたちが教科の土台を作る時期です。「自分で勉強したい」「こんな人になりたい」という将来の目標を見つける時期でもあります。この時期に見つけたものや出会った人が目標になり、その後の大きな成長につながっていくことが多いのです。(つづく)