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子どものつまずきを考える⑤ つまずくのは中学年だけではない

5 つまずくのは中学年だけではありません

 1年生が学校に適応するまでに時間がかかります。一番の大きな壁は、「会話のスタイル」の違いです。入学する前は、個人的な「1対1」の対話でした。幼稚園や保育園では、「ねぇ、せんせい」と話しかければ、「◯◯ちゃん、なぁに?」と自分だけに個別の返事が返ってきました。小学校では、先生一人とクラス全員、つまり「1対多」のコミュニケーションスタイルが主になります。

 学校では、子どもたち一人ひとりと笑い合える関係を築くまで、1対1の関係を作ることに力を注ぎます。朝登校してくると、子どもたち一人ひとりに「おはよう」「今日は何を食べた?」「今日は何をしたい?」などと声をかけます。こうしたことを繰り返して1対1の関係を作り、アイコンタクトがとれるようになってから、1対多の関係が進んでいくことになります。この段階を踏んでいく中で、子ども同士のネットワークができてきます。教員対子どもの関係だけでなく、子ども対子どもの関係ができたところで、教員は少しずつ距離をとるようにしていきます。

 1年生を見ていると、家庭での話の中に友だちの名前が出てくるようになります。友だちとのネットワークができてくる頃には、自分はクラスという「つながり」の中にいるのだという自覚が出てきます。この「つながり」の中にいる自分を自覚し始める頃から、先生が「みなさん」と言えば、教室の中のみんなのことで、自分もその一人(ワン・オブ・ゼム one of them 仲間の一人)だと自覚できるようになります。

 成長の階段を目の前にして、簡単に第一歩を踏み出せる子どもがいれば、どうしてもつまずいてしまう子どももいます。大事なのは、つまずいても立ち上がる力(レジリエンス)を持っているかどうかということです。