日誌

算数がわからないことを考える⑥

6 文章題が苦手なのはなぜ?

算数の文章題を解くにあたって大事なことは、頭の中で絵が描けるか、イメージできるかということです。文章題の苦手な子どもは、後で「どんな問題だったのか説明してみて」と促しても語り直せません。自分の言葉で説明できないのです。文章を読んでそのストーリーを描ける子どもは、文章題を苦にしません。例えば「Aちゃんがお買い物に行き、リンゴを3個買って帰りました。お家にはリンゴが2個ありました。リンゴは全部でいくつでしょう」という文章題があるとします。問題文から、お買い物をしている状況を想像し、赤いリンゴを思い浮かべ、そして最後はどうなったかなとイメージできれば、「これは足し算だな」とわかるのです。

学年が進んで分数や複雑な割合が出てきても、その情景をイメージ化できて、それぞれの関係を結び付けることのできる子どもは、心配ありません。算数というのは、余計な情報をどんどん切っていくものなのです。ミカンであろうがリンゴであろうが、最後は数字だけが残るわけですから。膨大な量の中から、抽象的なものを残して他を切り落としていくというのが、算数の本筋です。しかしこの作業を行なうには、たくさんの問題に出合い、訓練し続けることが必要です。

低学年の場合、この算数の本筋の逆をやらせることもあります。例えば、「2+3」という式を使って、できるだけ長い文章題を作らせます。「リンゴ2個とミカン3個、合わせていくつ?」という問題文ができたら、次に「どうしてミカンとリンゴ が一緒にあるのかな?」、「お友だちが家に来るから果物をたくさん用意することになったの」というように話を膨らませていきます。この操作ができるようになると、これとは逆の、『切り落としていく作業』もラクにできるようになるのです。

上級生になると、問題を一問解くために、いくつもの情報を使わなければならないケースも出てきます。時間の問題、割合の問題、図形の問題が組み合わさっている1問があるとすれば、どれか一つでもわからなければ答えを出すことができません。と同時に、不要な情報は切り捨てるという決断力も必要になってきます。

要は、頭の中のどの引き出しを開ければこの問題を解くために有効な情報が入っているのか、答えを導き出すのに何が必要で何が不必要なのか、を判断して制限時間内に答えを出す。それができて、初めて点数に結び付くのです。

 

文章題に強くなるヒント

計算題を解くのは得意なのに文章題になると途端に筆が止まってしまうのは、とてももったいないことです。知識や技術は、応用できなければ宝の持ち腐れになってしまいかねません。今後、計算能力を生かせばどんなことができるのかなど、家庭で将来の夢を語らせてみると、苦手意識を克服するきっかけになることもあります。

(1)文章の情景をイメージする

文章題を解くには、文章の情景をイメージできるかがカギになります。まずは、問題を音読させてみてください。スムーズに読めなければ、問題の意味を理解していないことが考えられます。突っかからずに読めたら、どういう内容だったか聞いてみましょう。うまく説明できなければ、「誰が、何を、いくつ、どこに」といった具合に尋ねます。また、絵や図を使って要点を整理していくのもいいでしょう。頭の中で考えるだけでは解けない問題も、実際に読んだり書いたりすることでヒントが見えてくるものです。

(2)まずキーワードや数を抜き書きする

文章題を読んでも問題文の意図がわからないときは、文中のキーワードや数をノートに抜き書きしてみます。書き出したポイントを結びつけたり、丸で囲ったりすることで、それぞれの関係性が明確になってきます。そのような作業に時間をかけるわけにはいかないテストに備え、問題文の中で重要だと思う部分に下線を引くという方法を試すといいでしょう。ご家庭での学習で卜レーニングしておけば、こちらの方法でも対処できます。

(3)問題をランダムに出して復習する

問題集をただ順番通りに解いていくのではなく、問題を一つひとつ切り取って、ランダムにノートに貼っていきます。次にどんな問題が出てくるかわからない、まさに本番のテスト問題のような教材ができあがります。このようなオリジナルの問題集を作って、本番に備えたトレーニングを繰り返しましょう。必要に応じて素早く問題を解くためのスキルを引き出せるような準備をしておけば、「どんな問題が出ても大丈夫」と自信を持ってテストの日を迎えられるようになります。