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子どものつまずきを考える⑯ どうしてそんなに喧嘩っぱやいの?

16 どうしてそんなに喧嘩っぱやいの?
 低学年の子どもは、自分の周りにいるクラスメートのことがとても気になるものです。相手のことをよく知らなくても「どんな子なんだろう」「どんな遊びをしているんだろう」と、常に関心を持って見ているのです。ところが、このくらい年代では、人の気持ちを考えながら行動をするとか、クラスメートとして接するにはどういう言葉遣いがふさわしいか、といった複雑なことを考えるまでには至りません。
 ですから、心の赴くままに思ったことを口にしてしまいます。その結果、相手の機嫌を損ねてしまうこともあります。自分の思いを表現する方法がわからなくても、頭の中が混乱状態に陥ると、つい手を出してしまったり、威嚇して相手を怖がらせたりすることもあります。相手もまた幼い子どもですから、さまざまな行き違いや争いごとが起こってしまうのは仕方のないことです。
 ただし、子ども同士の喧嘩をしたからといって、そのことを深刻に悩むことはないと思うのです。怪我をさせたり、度の過ぎた暴言を吐いたりすることは、即刻注意しなければなりませんが、ただの口喧嘩程度であれば、静観してもいいくらいです。大人の喧嘩は、原因も内容も複雑な場合が多いのですが、子どもの喧嘩は本質的に違います。その場で思いついたことを、ただぶつけ合っているだけです。手段としては決して褒められることではありませんが、本音をぶつけ合えるほどの間柄になったことは、むしろ評価してあげてもいいくらいだと思います。喧嘩した事実を責めないようにしましょう。どちらが悪いのかを裁くようなこともしないでください。大人が注意を払わなくてはならないのは、実は喧嘩の後です。

 喧嘩した相手と、その後仲直りはできたでしょうか?もしできているのなら、そのことをたくさん褒めてあげてください。自分で起こしてしまった問題を、自分の力で解決したのですから、それは大きな大きな成長です。喧嘩しても仲直りができる相手というのは、その後本人にとってもかけがえのない存在になることが多いものです。もし、喧嘩の後に仲直りができなかったとしても、そこに大人が口をはさむ必要はありません。その相手とは気が合わなかっただけなのでしょう。仲直りのできない相手とは、今後おそらく喧嘩になることもないはずです。子どもが「仲直りしたいのにどうしたらいいのかわからない」と訴えてきたのなら、そこで初めて大人の出番です。興奮が落ち着くのを待ってから、子どもの辛い気持ちを共有してあげてください。子どもが、喧嘩の原因や経過、結果を教えてくれても、そこには口をはさまないようにしましょう。ただ黙ってうなずいてあげれば充分です。

 仲直りできるということは、コミュニケーション能力が高いということでもあります。どんなにたくさんの言葉を並べても、そこに気持ちがこもっていなければ、相手の心には届きません。まだ言葉遣いも上手ではない小学生が、相手の怒りを鎮めるという難度の高いコミュニケーションをやってのけたのです。喧嘩の是非はとりあえず棚にあげて、思い切り褒めてあげましょう。