日誌

国語がよくわかっていないことを考える⑤

5 単調な文しか書けないのはなぜ?

 小学校では今、「書く」学習に、多くの授業時間を費やしています。「文を書く」という意味で、かつては『作文』という言い方が一般的でしたが、今の学習指導要領では、どのような文章を書くかが具体的に示されています。『身近なことや想像したことを書く文章』『経験したことを報告する文章』『説明する文章』『手紙』『日記』というように、目的によっていろいろなジャンルの文章があり、詩や俳句、短歌なども作ります。例えば『あさがお日記』のような記録文は、きちんと事実を見て記録しなければなりません。『感想文』であれば、どんなところに感動し、何を思ったかを、読み手に伝えることのできる文章が求められます。

もちろん、子どもによって得手不得手があります。文系で『継次処理型(物語好き)』タイプの子どもは、自分の感じたことや登場人物の心情などを豊かな表現で書き綴ることが得意ですが、レポートを書くときには苦戦しているのが見て取れます。

逆に、理科系で『同時処理型(図鑑好き)』タイプの子どもは、簡潔でわかりやすくまとめる力があり、結論を導き出すまでのレポートを見事に書き上げます。しかしその一方で、感想文や旅日記などの文章を書くときには一気に鉛筆のスピードは落ち、書いた文を見ても、単調な短文を並べているだけの、味気ない内容になっていることがあります。

子どもたちにはそれぞれ得意分野がありますが、不得意分野があるのもまた当然です。いずれにしても学校では、ジャンルを問わずいろいろな文を書けるように指導していくわけです。学習指導要領で6年生の「書く」学習の目標としては、『随筆』を書くことです。『随筆』とは、「ものの見方に自分なりの視点があって、自分の意見や感想を入れながら、記述する」とあります。

卒業文集に載っている文章は、ある意味6年間の集大成といえます。ただ事実を羅列するのではなく、そこでどんなことをして、どんなことを学び、どう感じたかという心情を表しているか、さらに、今までの生活経験とつなげて記述してあるか、その子どもなりの視点で文章を記述することができることを目指しています。「書く」ことは、個人差が大きいものですが、まずは気軽に書き慣れることからはじめ、ねらいに即して書くことまで導いてやりたいものです。

 

文章力を上げるヒント

記録文や説明文を書くことよりも、自分の気持ちを文章化することに、迷いや抵抗があることが多いようです。おそらく、自分の気持ちが受け入れられるだろうか、笑われないだろうかと不安になるのでしょう。それでも、きちんと伝えることができたときには、書くことの喜びを味わえるのだということを、まず教えていきたいですね。

(1)何を伝えるべきなのかを明らかにさせる

昆虫好きの男の子が、『夏休みの思い出』というテーマで昆虫の特徴を説明した文を書いてきました。よく調べていて、観察日記としてはいい出来でしたが、思い出については、「楽しかったです」の1文のみ。そこで「どこで見つけたの?」「誰と一緒に行ったの?」「捕まえ方のコツは?」と、 何を書くべきなのかを質問していくと、きちんと語ることができました。

このように、質問していくことで、何を書かなくてはならないのかが明らかになり、次第に書くことの意味を理解できるようになり、次第に書くことの意味を理解できるようになります。

(2)語りながら文体を学ばせる

まだ鉛筆を握る力も弱く、文字を書き慣れていない低学年にとっては、「文章を書く=面倒なこと」と思ってしまいがちです。ですから、できるだけ簡単に終わらせてしまおうと、事実のみを箇条書きのように並べただけで提出してしまうことがあります。

書き続けることをおっくうに思っている間は、「今日あったことをお話ししようね」と、好きなように語らせるだけで充分です。慣れてきたら、文体の間違いを直します。「あったこと」だけではなく「思ったこと」を語らせるといいでしょう。

(3)子どもが書いた文章に興味を持つ

もし子どもが、「きょうはえんそくにいって、オタマジャクシがいちおくひきもいました」という文を書いたとします。でもそこで、「何を言ってるの?1億匹もいるわけないでしょ」と否定しないでください。興味を示しながら「すごいねぇ、そんなにたくさんのオタマジャクシを見たことがないわ」と驚いてあげてください。子どもは嘘を書いているつもりはありません。

子どもの目には「1億匹」に匹敵するくらいたくさんに映っただけなのです。子どもの思いに寄り添ってあげれば、書くことを楽しむようになります。