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子どものつまずきを考える⑥ 集中力は女子より男子の方がある?

6 集中力は女子より男子の方がある?

 男女の性差をさまざまな場面で感じることがあります。幼児の頃の興味や遊びにも現れ、車や電車のおもちゃに興味を持つ男の子と、人形遊びに興味を持つ女の子という印象があります。なぜ、このような違いが現れるのでしょうか?脳の成熟のスピードに違いがあると言われています。ヒトの脳は左脳と右脳での機能が異なります。左脳は理性の脳と言われ、言語や計算を担当します。一方、右脳は感性の脳と言われ、地図や立体を読み取ったり、音楽を知覚したりするときに活躍します。

 この左脳と右脳は、脳梁(のうりょう)という左右の脳の連絡と制御を担う神経線維の束でつながれています。女子の脳梁は男子よりも厚みがあり、そのため右脳と左脳とがスムーズに連絡を取り合えるので、女子は何かに集中しているときも周囲に気を配ることができます。人からアドバイスをもらえば、集中しても手を止めてそのアドバイスに耳を傾けることができると言われています。男子はいったん何かに集中すると、自分の世界に入り込んで、周囲をシャットアウトしてしまう傾向があります。

 男子が車や電車のおもちゃや虫などに興味を示すのは、ものに興味があるからで「図鑑型」「同時処理型」と言われています。興味の対象をみつけると、夢中になり時間を忘れてしまうし、「何時までに帰ってくること」とか「これが終わったら宿題をしなさい」といった保護者との約束まで忘れてしまうのです。

 一方、女子が人形遊びを好むのは、人形そのものよりも、人形を人に見立てて、いろいろな物語を作っていく過程に魅力を感じているのでしょう。男子の「図鑑型」「同時処理型」に対して、「物語型」「継次処理型」と呼ばれています。このタイプの子どもは、赤ちゃんや小動物に興味を示したり、困っている人には進んで手を貸してあげたりと、人や生き物とのつながりを大事にします。

 もちろん、乗り物やロボットなどに興味を持つ「図鑑型」「同時処理型」の女子もいるでしょうし、「物語型」「継次処理型」の男子がいないわけではありません。しかし、あくまでも少数であり、多数は、男子は「図鑑型」「同時処理型」、女子は「物語型」「継次処理型」の気質を持っていることが多いようで、脳の成熟の差によるものではないかと推測されています。

 集中力に関しても、性差があるように思われます。男子は一つのことにわき目も振らずに長時間やり続けられますが、自分が興味を持ったものに限られます。「やらなければならないこと」があっても、「やりたいこと」を優先するのです。女子は一心不乱に没頭するよりも、状況に応じてフレキシブルに対応する力が備わっているように思います。「やらなければならないこと」があれば、できるだけ優先しなければならないと考えられますし、「やりたいこと」を少しセーブしたり、時間を決めてコントロールしたりできます。自分以外の人や状況に目を向けることができるからです。同年代の場合、女子は男子よりも大人っぽいと言われるのは、このせいでしょう。特に小学生のうちは、その傾向がより顕著にみられます。

 ただし、個性の核となる気質は、お父さんやお母さんから多く受け継がれます。親子が同じジャンルのスポーツや音楽を好んだり、親子揃ってアウトドア派であったりするのは個のためです。子どもに対して、「集中力がない」とか「やる気がない」と思われたら、「もし自分が集中できない場合は、どうやってその状況を乗り切るだろうか」を考えてみましょう。解決のヒントが見えてくるかもしれません。