日誌

算数がわからないことを考える③

3 どうすれば『割合』『比率』を理解できるの?

『割合』『比率』の学習は、子どもにとっては大きな壁です。分数や小数の知識が身についていないとなかなか理解できないし、たとえ分数や小数が得意でも、割合や比率に関連づけたりする知恵がないと、「わからない」で終わってしまう可能性もあります。ものの見方には、加法的な見方と、乗法的な見方がありますが、子どもたちは通常、ものの大きさや量を比べるときには「差」を見ています。ですから早いうちから、意図的に「比」で考えられるようにするといいですね。

お姉ちゃんは折り紙を10枚、本人は5枚持っていたとき、「お姉ちゃんのほうが5枚多いね」というより、「お姉ちゃんは、あなたの2倍持っているわね」とか、おやつにクッキーが8枚あって4枚食べてしまったときは、「4枚食べた」ではなく「もとの数の半分になっちゃったね」といった具合です。「何を基準にしているのか」をはっきりさせておく習慣をつけておくといいでしょう。

一緒に買い物に出かけていけば、「果汁30%のジユース」とか「本日全店3割引」といった表示を目にする機会があります。「今日は安くなっている」と言って、さっさと買い物を済ませてしまうのではなく、「なになに?定価が5000円で3割引。てことは、このシャツ3500円ってことね。すごい。1500円も得したね」といった投げかけをしてあげるといいでしょう。このように、割合について馴染むような会話をしていると、実際に授業で習うときに理解するのがラクです。『割合』『比率』という言葉は知らなくても、意味は理解できているからです。

説明しよう、教えてあげようと構えることはありません。例えばテレビを見ていて「あら、消費税が8%から10%になったね。いやだ、大変だわ」といった話題をちょっと取り上げるだけで充分です。子どもが「何が大変なの?」と聞いてきたらしめたもの。「だって100円のノートが、今は108円で買えるけど、10%になったら110円払うのよ」と。「たいしたことないじゃん」と言うなら、「じゃあ、1億の家を買うとして、今なら消費税800万円だけど、10%になったら1000万円よ」という会話でもいいと思います。

 

『割合』『比率』を使いこなすヒント

家事をはじめとして、私たちは日常の中で『割合』『比率』の考え方を使っています。料理の味付け、洗濯時の洗剤や水の量の調整、買い物や掃除、一日の時間配分をするときなど、振り返ってみるとけっこう思い当たります。子どもにもこういった貴重な体験を積ませて、知識を日常の中で生かすことを学んでほしいと思います。

(1)意図的に『割合』や『比率』を使う体験をさせる

例えば、料理のレシピはたいてい4人分で書かれていますが、「このレシピを使って3人分の料理を作るときはどうすればいい?」と、実際に挑戦させてみます。表示されているそれぞれの材料を4つに分けた分量を3倍することになりますが、その比率は変わりません。野菜も、肉も、すべてその割合になるのです。そしてできあがる量も同じ割合です。基になるのは何かを理解した上で、考え方が混乱しないように整理させてみてください。このような経験によって、『割合』や『比率』について正しい見方が身につくようになります。

(2)会話の中に、割合の表現を意識的に挟み込む

新聞やテレビでも、割合や比率はよく登場します。お父さんと一緒に野球中継を観れば、打率や盗塁率、防御率など、比率に関する数字が出てきます。何を基にして、どのような計算で算出しているのかを教えてあげてください。ほかにも、ニュース番組を聞いていると、降水確率〇%、失業率〇%、消費税率〇%とあちこちに貴重な教材が豊富に揃っていることに気づきます。

(3)割合は、実際の大きさや量を意識させる

脳全体を100%として、例えば、お父さんの脳内は、仕事40%、趣味20%、家族20%、お酒10%、スイーツ10%というように、割合を円グラフにするという遊びがあります。『割合』や『比率』がひと目でわかる円グラフは、視覚的に子どもの興味を引くのでぜひやってみてください。このように、子どもから大人まで家族みんなで楽しめるような遊びを通して、割合への理解を深めていくことも、ご家庭においてはとても効果的な取り組みだと思います。さっそく家族みんなの脳内円グラフを作ってみましょう。