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学力をつけるためには?❾

❾くりかえす  -変化と負荷を上手に繰り返す

私たちはよく、勉強だけでなく、スポーツや楽器などでも、「何度もくりかえしてコツコツ努力すれば、できるようになるよ」と子どもを励まします。世界的ベストセラーとなったマルコムグラッドウエルの著書『天才!成功する人々の法則』(講談社)では、どんな分野でも約1万時間取り組めば、その分野の一流になれるという「1万時間の法則」が有名になりました。

ところが心理学の研究によると、ただやみくもにくりかえせばいいわけではないことがわかってきました。くりかえしによって習得するという学習法には、いくつか注意すべき点があることが明らかになっています。

 

うまく「くりかえし」を生かすにはどうすればいい?

(1)単調な反復は効果なし

問題集を何度もくりかえして勉強したはずなのに、なぜかテストで大失敗……。そんな経験はないでしょうか?じつはこれが、単純な反復学習の落とし穴です。心理学では「流暢性の罠」と呼ばれるものに引っかかった状態です

「流暢性」とは、情報を適切にすばやく処理し、アウトプットする能力です。ところがこの「解き方がすぐに思い出せるくらいやりこんだから大丈夫」との思い込みが、かえって脳を油断させ、記憶したことをすぐに思い出せないという状況に陥らせてしまうのです。

(2)変化を織りまぜる

アメリカのウィリアムズ大学の心理学者、ネイトコーネル准教授らの研究では、反復練習に少し変化を加えた課題を混ぜると学習能力がアップし、記憶が長期的に定着することがわかりました。日々の学習に過去に学習した単元なども混ぜると良いということです。

子どもは問題に応じて解き方を考えなければならなくなるので、一見すると非効率に思えるのですが、トロント大学の心理学者、マイケルインズリット教授は「秩序を乱す何か、その場にそぐわない何かを目にすることが、事実上、脳を目覚めさせる」と指摘しています。

問題にバリエーションを加えた学習法で、 それぞれの「違い」を意識しながら理解すると、特徴をはっきりとつかめるようになるほか、本番での思わぬアクシデントにも強くなるそうです。

(3)少しだけレベルアップさせる

フロリダ州立大学の心理学者、アンダースエリクソン教授は、あらゆる分野の超一流の人々は、「自分にとって居心地のいい領域(コンフォートゾーン)から飛び出し、少しだけ限界を超える負荷をかけつづけている」という「限界的練習」理論を唱えています。

世界中の超一流の人々を30年以上にわたって研究してきたエリクソン教授は、「私たちは誰でも、この『限界的練習』をくりかえすことによって、まわりの人から見れば『生まれつきの才能』にしか思えないほどの、並外れた能力を獲得することができる」といっています。

もちろん、新しい単元やテクニックを学ぶには、くりかえしの練習によって慣れていくことは欠かせませんが、そこに変化を混ぜること、少しの負荷を加えてやることが重要だということです。