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子どものつまずきを考える⑩ 好きなことしかしたがらないのはなぜ?

10 好きなことしかしたがらないのはなぜ?

 「好きなことをしていたい」と思うのは、大人も同じではないでしょうか。それでも、自分の気持ちを奮い立たせて、たとえ面倒なことや気の進まないことでもやっているのは、それぞれに理由があるはずです。「人の役に立つことだから」「本当にやりたいことのために必要だから」「子どもに頑張っているところを見せたいから」など。折を見て、そんな気持ちを子どもに伝えてみてはいかがでしょうか。

「好きなことしかしたがらない」のが問題なのではなく、むしろ「好きなことをしたがらない」「好きなことがない」というほうが問題だと思います。子どもたち一人一人には、個性があります。興味を持つジャンルや方向、得意分野もそれぞれです。学校は、そんな子どもたちの集まりです。「自分の知らなかったことを、隣りの友だちが教えてくれた」「◯◯くんが発表していた内容がすごく面白くて、自分もやってみたくなった」といった声が毎日のように聞かれています。まずは「好きなことしかしたがらない」「自分の子はこんなことしかできない」と嘆くのではなく、「自分の子は、こんなことができる」と考えてあげることです。自分の子をそういう目で見てみると、「おや、うちの子、なかなかイケているかもしれない」と、子どもの良さを発見できるものです。

好きなことだけやっていればそれでいいのかと言えば、そうではありません。一部の親御さんの中には「ゲームをやっているときは、すごく集中しています。興味を持ってくれれば勉強にも集中できると思うんです」と考えておられる方もいます。この考え方は、すこし改めてください。ゲームというのは、始めのうちこそ試行錯誤することがあるかもしれませんが、繰り返しやっているうちに、何も考えることがなくボタン操作を行えるようになります。このような単純作業に慣れてしまう状況が続くと、自分で考えることが面倒になり、思考力がサビつく可能性もあります。

勉強は、自分の頭でしっかり考えていかなければ身につきません。覚えた知識を応用しながら次の段階に進んでいきます。そして、その判断をするのは、内蔵されたコンピュータではなく、自分自身です。算数の計算や漢字練習などは繰り返し行うものですが、その途中で考えたり確認したりしなければならないことが出てきます。また、本を読むときには文章からイメージを描くことが大切なのですが、ゲームの画面に依存しすぎているためか、文章だけでは内容を理解できない子どもが増えています。つまり「思考する力」は、ゲームなどでは養えないということです。

勉強というのは、ただ単純作業を繰り返すだけでは身につきません。小学生のうちに思考力を働かせることを怠っていると、進級するにつれて、本来求められている学力に追いつかなくなってしまいます。勉強は、ただ漠然とやっているだけでは、なかなか成績は上がらないものです。成績の良い子どもには、「目標」があります。それも自分のためになる目標、目指すのが楽しくなるような目標です。