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子どものつまずきを考える⑫ どうしてすぐにバレるような嘘をつくの?

12 どうしてすぐにバレるような嘘をつくの?
 小学生の間は、「悪意の嘘」をつくことはほとんどありません。というよりもそういう嘘がつけないのです。例えば、大人から「嘘をついたでしょう」と言われたとしても、「これが嘘なんだ」認識できるようになるのは5歳後半くらいです。プラン能力も出てくるので嘘をつくこともありますが、嘘をつくための認知技能は未成熟なので、上手に嘘をつくことはできません。ついたとしてもすぐに発覚してしまいます。
 子どもが嘘をついたとしたら、まずその理由を理解してあげることが大切です。幼い子どもの場合、空想世界の嘘をつくことがあります。幼稚園の年長組の頃には、空想と現実の境界線が曖昧で、現実ではあり得ないことを本当にあったと思い込んでしまうことがあります。「くまさんが、朝起こしてくれたんだよ」というようなかわいい噓です。
 「こうだったらいいのにな」という思いが高じてつく嘘もあります。例えば、テレビに子犬が映ったとき、お母さんが「かわいいね。こんなワンちゃんいるといいね」などをつぶやいたとします。すると子どもは学校で「今度、家でワンチャンを飼うんだ」と口にしてしまうことがあります。これは、願望から出た嘘ですが、ほんにんは「嘘をついた」という認識はありません。
 少なくとも9歳頃までは、意図的な偽りはないのです。出来事を思い起こしていくうちに、意図的に付け加えるわけではなく、話全体の筋道を変えるしまうような新しい結びつきを付け加えてしまうのです。それを理解せずに、周囲から「嘘ついたでしょ」「あなたは嘘つき」と詰め寄られると、本当の嘘つきになってしまうかもしれません。だから、「嘘つきはいない」「我が子は噓なんてつかない」と、性善説で子どもを育てたいものです。高学年になり年齢が上がっていくにつれて、「これは嘘だ」とわかっていながら嘘をつくことがあります。お母さんに叱られるのが嫌で、自分を守るために嘘をついて、その場を取り繕うとするのです。これは、「避難するため」の嘘です。「嫌われたくない」「悲しませたくない」、つまり、お母さんにずっと好きでいてほしいから、それが結果的に嘘をついてしまうことがあります。意識せずとも、都合よく再構成してしまうのでしょう。

 子どもが自分では嘘をついているとは思っていないのに、なぜ結果的に嘘をついたことになってしまうのかというと、思い出すという行為が、入れた記憶がそのまま出てくるわけはないからです。私たちの認識のメカニズムとして、いったん入れた情報は、思い出す文脈に合わせて再構成されるのです。伝言ゲームを思い出してみても、誰も嘘を伝えるつもりがなくても正確には伝わらないものです。情報を受け入れるときは、自分の枠組みに合わせて変容させるという改変も起きてしまうものです。悪意を持って使って使ったときには、嘘になってしまうのです。小学生の嘘は、「悪意の嘘」ではなく、無意識に再構築されてしまった嘘であることを理解してあげましょう。