日誌

自己肯定感をつけるには?❻

❻「なんでも言える環境」をつくる  ―勇気をもって甘やかす

子どもにとって望ましい環境について、英語では「safe」という単語がよく使われます。日本語では「安全」と訳されますが、英語では必ずしも物理的な危険から遠ざけるということだけではなく、「無条件にそこにいられる」というニュアンスが含まれています。心理学者のアルフレッドアドラーは、子どものころから本音を言わず、周囲の空気を読んで同調することをくりかえしていると、自分を信頼できなくなってしまうと指摘しています。

自分を信頼できないと、まわりの人のことも信頼できなくなり、社会の誰かの役に立ちたいという思いも芽生えなくなってしまいます。子どもにとって、周囲と同じでなければならないというプレッシャーや、失敗や間違いを気にせず、率直に自分の考えや感情をさらけだせる安全な場所が必要です。

 

「なんでも言える環境」をつくるにはどうすればいい?

(1)寄り添う姿勢で

子どもにダメ出しばかりしていると、子どもはつねに「こんなことを言ったらバカだと思われるのではないか」「こんなことをしたら怒られるのではないか」といった不安にとらわれてしまうようになります。親は子どもに完璧を求めずありのままを受け入れ、子どもが本音を押し殺さないように寄り添います

(2)愛情を伝える

子どもには「目の前にいてくれるだけでうれしい」「生まれてきてくれてありがとう」という気持ちを言葉やスキンシップで伝えます。50年間、子どもの精神医療に尽力した佐々木正美医師は、晩年の著書の中で「どうぞ子どもを甘やかすことを決して恐れず厭(いと)わず、一生懸命にかわいがって育ててあげてください」と記しています(『子どもの心の育てかた』河出書房新社)。佐々木医師は「過保護」は悪いことではないといい、愛情をたっぷりと受けることで、子どもは自他に対して「絶対的な信頼感」を知り、「自律心」が育つのだといっています。

(3)先回りしない

ただし佐々木医師は、過保護と過干渉は違うことも指摘しています。過干渉は、親が子どもを心配するあまりつい先回りをし、一方的に「こうしたほうがいい」と思うことを言ったり、手を貸したりしてしまうことです。過干渉は自立の芽を摘みとり、自主性、主体性を損なうおそれがあると佐々木医師はいいます。しつけという点では、やってはいけないことへの最低限の干渉は必要です。しかし子どもは、周囲から「ああしなさい、こうしなさい」と言われてばかりいると、自分のやりたいことがわからなくなって自分を見失っていくと、佐々木医師は警鐘を鳴らしています。

(4)否定的な態度に気をつける

否定的な考え方や態度は子どもに伝染します。トロント大学の生命倫理学者、ケリー・ボウマン教授は「感情は伝染する。中でもネガティブな感情こそ、最もうつりやすいだろう」と述べています。親が批判的否定的な考えが強いと、子どもにも伝染し、子どもは自分自身のことを悪く言われているわけではなくても、自分に自信がもてなくなってしまいます。