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子どものつまずきを考える④ 心や体の成長過程に立ちはだかる壁

4 心や体の成長過程に立ちはだかる壁

 3,4年生は思春期前期。心も体も急激に発達し、大人への大きな一歩を踏み出す時期です。急激な変化に戸惑い、心と体のバランスを崩してしまうこともあります。大きく成長していく姿が見られる楽しみな時期ですが、その一方、心身共に不安定な状態であることを忘れてはならないのです。

 自分の中で起こる変化を受け入れて、上手に自分と付き合っていける子どももいます。しかし中には、感情を上手くコントロールできない子や、相手の気持ちを考えず自分勝手な行動を繰り返す子どももいます。いわゆる困った子どもたちは、もがいているだけです。どうにかして乗り越えようとするのですが、上手くいかない。だから余計に困った行動を起こしてしまう・・・、という悪循環を繰り返してしまいます。

 このような子どもに対して、大人ができる最もふさわしい行動は“寄り添うこと”です。子どもと会話するとき、たいていの家庭では、テーブルをはさんで向かい合っている状態だと思います。向かい合うというのは、意思をはっきり伝える場合や、理論的に説明する場合、あるいは議論を戦わせる場合にはふさわしいのですが、そこには緊張感が伴います。

 相手の気持ちを理解したい、自分の気持ちを伝えたい、お互いの気持ちを通い合わせたいと思うときには、寄り添うこと、つまりいつまでも手を伸ばせば離れることのできる距離を保ち、並んでいる状態でいることがとても大事なのです。

 子どもと一緒に並んで歩く機会を増やすのもとてもよいのです。子どもにとって、何よりの安心感につながります。花を見て「あぁ、きれいね」と話しかけたり、時にはお母さんの悩みを子どもに聞いてもらったりするのもいいかもしれません。意識的に感情を表す言葉を使いながら話しかけていくと、子どものほうも自分の感情を言葉にしようとします。すぐそばに寄り添っているからできることなのです。

 また、体の変化をもてあまし、上手くコントロールできない子どももよく目にします。特に、しなやかな動きができない子どもが目につきます。転んだときに体のバランスがとれない、とっさに手でかばえば危険な状況を避けるためにしがんだりジャンプしたりする判断ができないなど。自分の身を守るすべが身についていないのです。これは幼少期から今に至るまで、体を充分に動かしていなかったからなのかもしれません。

 最も効果的なのが、走ることです。走って体力をつけることから始まればいいと思います。実際に、「走る」ということを本校でも持久走として取り入れています。子どもの遊びの「鬼ごっこ」もとても効果的です。鬼ごっこには、まわりに目配り気配りしながら、ダッシュしたり、ゆっくり走ったり、いきなりストップしたり・・・と、不規則な動きの連続です。

 心と体をバランスよく鍛えるためには、積極的に家でお手伝いをさせてほしいと思います。「お手伝いをさせる時間はない。そんな時間があったら勉強してほしい」と思われるかもしれません。経験豊かな指導者(お父さんやお母さん)から、直接アドバイスをもらいながらの作業ができるので、こんな質の高い学習は他にはありません。料理を手伝いながら旬の野菜を覚えたり、部屋の模様替えを手伝いながら、重いものを持つときの力のバランスを学習したり、体力をつけたり・・・。手伝いをすることは、生きるための知恵を身に付けることでもあります。