日誌

算数がわからないことを考える⑦

7 わからないまま、なぜいつまでも考え続けるの?

「いくら考えても答えが出ない」と苦戦しながらも、難問を前にしてもあきらめない子どもを見ると「この子はこれから伸びていく子だな」と、ちょっと嬉しくなります。投げ出さず、ふてくされず、自分で何とかしようと挑戦し続ける気持ちがあれば、いつか必ずその成果は出てくるものです。ただ年齢にもよりますが、子どもが集中して考え続けるには限界があります。ですから、ずっと考えているうちにフッと気を緩めるときがあります。緊張状態と緩和状態をバランスよく配分しながら机に向かっているならば問題はないのですが、緩めたまま、別のことをずっと考え続けているようならば、いつたん机の前から離れることを促したほうがいいでしょう。

「もっと効率よく勉強しなさい」「集中力が足りないんじゃないの」などと追いつめることだけは避けて、よく話を聞いてあげて本音を聞き出してみてください。今やっている勉強が難しすぎるのかもしれません。悩みを抱えているのかもしれません。

よく、「算数は積み重ねの教科だから、今わかっていないとだめだ」と心配されるお母さんがいますが、それは大きな誤解です。算数は取り返しのつく教科です。中学校に進んで数学を勉強していく中で、いやでもこれまで学習したことのすべてを復習せざるを得ません。ここが、理科や社会科と違うところです。算数は、今やっていることに本気で取り組めば、全部それが復習につながります。どこか一つ取りこぼしたとしても、後で必ず取り返すことができます。

一度くらいつまずいたからといって、「算数は苦手だ」と決めつけないことです。新しい問題に取り組んでいくうちに、自然に理解できるようになるものです。そのときに理解できなくても、しばらく経ってから、「ああ、あのときわからなかったのは、こういうことだったのか」と気づくことが多いのです。しかも、算数にはいろいろな解き方があります。よく「算数の答えは一つだ」と言います。確かに答えは一つかもしれませんが、答えを導き出す方法はたくさん用意されているのです。例えば、植木算がわからなくても、鶴亀算でつまずいても、「方程式を使えばできちゃった」という子どももいます。それをきっかけに算数が苦手科目から得意科目になるケースもあります。心配しすぎないでください。

 

「わからない」を助けるヒント

わからないなりに頑張ろうとしている子どもに対し、厳しい言葉を投げかけるのは逆効果です。大人の意見を一方的に説いても、「こうしなさい」と命令しても、子どもの耳には届きません。頑張る姿勢を評価した上で、何につまずいているのか、手助けできることはないのかと、穏やかに本音を聞き出してあげましょう。

(1)現時点のレベルに合った問題を解く

親御さんの立場からすれば、自分の子どもが「学校の勉強についていけていない」と認めるのは辛いことかもしれません。しかし当の子どもは、もっと辛い思いをしています。その心情をわかってあげて、一緒に解決していく方法を話し合いましょう。まずは、つまずかずに問題が解ける時点に遡ってスタートします。簡単な問題でも、「できた!」という満足感を味わうことが自信につながるのです。そして、そこから、「もっと頑張ろう」という意欲が出ます。多くの成功体験を積み重ねていけるよう、長い目で導いてください。

(2)体を動かす時間を作る

長時間机の前に座り続けていると血行が悪くなり、次第に頭も働かなくなります。机を離れ、体を動かすように勧めてあげましょう。軽いストレッチ運動や、ゆっくりと外を歩くのも効果的です。お母さんも家事の合間に、子どもと一緒にウォーキングに挑戦してみるのもお勧めです。歩きながら楽しい時間が過ごせます。凝り固まった体をほぐして気持ちを一新した後は、頭もスッキリしているはず。「さぁ、もうひと頑張りね」と励ますことも忘れずに。

(3)途中経過をしっかり書く

 一つの答えを導き出すために、頭の中で考えを巡らせてもなかなか解決の糸口が見つかりません。答えを導き出せないということは、方法が間違っているか、または何かが足りないわけですから、 見方を変えてみるのも一つの方法です。また、頭の中だけで答えを出そうとせず、とにかく何でも書き出してみる習慣をつけさせましょう。書き出すことで頭の整理がついてくることもありますし、何がわかって何がわからないのか、はっきり目で確認できるので、対策も立てやすくなります。