日誌

国語がよくわかっていないことを考える⑥

6 どうすれば漢字を覚えられるようになるの?

漢字に苦手意識を持ってしまう理由には、漢字の面白さや便利さにまだ出合っていないことが挙げられると思います。面白さもわからないのに、テストのためだけに勉強しなくてはならない……。これでは、なかなか身につきません。また、漢字を単なる記号としかとらえていないために、機械的に暗記するしかなく、漢字の勉強を苦痛に感じてしまうことも考えられます。

漢字を習得するには、漢字をしっかりと見てカタチを覚えます。そして実際に書き、書いた漢字をもう一度目で確かめて覚える、という手順を繰り返すことです。地道な作業ですが、こうやって覚えた漢字は、しっかりと正しいカタチで記憶されます。「そんなこと当たり前だ」と思われるかもしれませんが、この当たり前の手順を繰り返すことが、実はいちばんの近道なのです。漢字は正しく覚えなければ、正しく使えないからです。

その上で、言葉としての意味を考えることも教えましょう。漢字の成り立ちを調べたり、漢字の部首を理解していくことで、効率よく漢字を覚えたりする子どももいます。しかし、それも正しい漢字のカタチを知った上でのこと。新しい漢字が出たときには、曖昧なカタチではなく手本を見ながら完全なカタチで書く習慣をつけましよう。国語のテストにおける漢字の配点は、決して少なくありません。確実に覚えておけば確実に点数を稼げるわけですから、取りこぼしのないよう注意を払うように言い聞かせてあげてください。

小学6年生までに覚える漢字の数は1006字です。学習負担に配慮しつつ、必要に応じて前後の学年の漢字を指導することができるようになりました。それでも子どもたちは大変な思いをしていることでしょう。特に低学年の中には、指がまだしっかり発達していない子どももいます。そのため、頭ではわかっているのに、その思考の流れに手が追い付かない子どももいますが、そのうち手の動きと脳のスピードが同じになってきますから、心配はいりません。

みんなが同じように発達しているとは限りません。小学生のうちは、差があって当然なのですから。親も子も焦らずに、一つひとつの漢字を大事にしながら勉強を進めていってほしいと思います。

 

漢字を正しく覚えるためのヒント

画数の多い漢字は、それだけで負担感があります。 逆に、難しい漢字を覚えられた喜びや、どのように使っていこうかというワクワク感があれば、使うことを楽しく感じるものです。漢字は使うことで身につくものです。日記や手紙、自作の物語を作るなど、楽しみながら使うことを教えてあげたいものです。

(1)漢字を使える喜びを味わう

 漢字は、とても優れた文字です。読んだ音だけでは意味がわからなくても、漢字で書けばすぐに意味を理解できます。例えば「じょせい」という音を聞いて首をかしげることがあっても、「女性」「女声」「助成」と書けば、その瞬間に意味がつかめます。また、漢字を使うことで読み手にも伝わりやすく、説得力も増す文が書けます。自在に漢字が使えるようになれば、本や新聞で目にするような端正な文章を自分も書けるかもしれない……。子どもたちにはこういった期待感を持って、漢字の勉強をしてほしいと思います。

(2)読書で文字としての語彙を増やす

子どもは、言葉をまず耳で覚えます。そのため、「体育館」を「たいくかん」、「水族館」を「すいぞっかん」といったような誤認識をしていることがよくあります。ものを音だけで理解している時点ではわかりづらかった意味も、漢字を学ぶことによって明らかになったり、誤って理解していた言葉も修正したりすることができるのです。話し言葉の語彙だけでは、漢字を覚えることにはつながりません。ですから、なるべく多くの活字にふれて、文字で言葉を増やしていくように導いていってほしいのです。その中で、読書をすることが最も効果的です。

(3)漢字は「部分」を組み立てたものだと理解する

画数の多い漢字は、覚えるまでに時間がかかります。そこで、漢字は、一つひとつの部分の組み合わせで成り立っていることに注目させます。そして次に、その一つひとつの部分は、それぞれに意味があることを教えていきます。例えば、「清」という漢字を見ると、「『さんずい』があるので水に関係した字である」ことと、「青という字は、セイと読む」ことがわかります。このように分解してみると、意味と読み方を同時に理解できる楽しさを知ることもできるわけです。漢字辞典を使えば漢字の意味や奥深さに気づき、興味も膨らんでいくでしょう。