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2020年11月の記事一覧

創造力をつけるためには?❻

❻「肯定表現」で話す  -ネガティブな思考を切り替える

人間はネガティブな感情や思考は忘れにくく、ついそのことばかり考えてしまう傾向にあります。進化の過程で恐怖や不安、怒りや非難といったネガティブな感情を抱くことで生命の危険から身を守ってきた結果、脳がそうしたネガティブな感情のほうが重要だと判断するようになったからです。ネガティブな感情は緊張や疲労感、無気力や自信のなさにつながるので、失敗を恐れず、新しいものに挑戦しようとする気持ちや行動にブレーキをかけてしまいます。

そこで、国際ポジティブ心理学会理事のイローナボニウエル博士は、ネガティブな感情を「肩に乗って考え方の癖を吹き込んでくるオウ厶」にたとえ、子どもの感じ方を変えていくプログラ厶を編み出しました(足立啓美他著、イローナボニウエル監修『子どもの「逆境に負けない心」を育てる本』法研)

オウ厶には、「誰かのせいだ」と言う非難オウ厶、「それは正しくない」と言う正義才ウ厶、「自分はみんなより劣っている」と言う敗北者オウ厶、「きっと悪いことが起こる」と思い込む心配オウ厶、「できるわけないよ」と思うあきらめオウ厶、「自分が悪いんだ」と自分を責める罪悪感オウ厶、「自分には関係ないし」と問題から目を背ける無関心オウ厶7種類がいます。子どもがネガティブな思考に陥っていると きは、この中でどのタイプが肩に乗っているのかを一緒に考え、そのオウ厶を追い払う方法を考えます。そして、オウ厶が吹き込む否定的な表現を、肯定的な表現に置き換えていきます。そのようにして気持ちを立て直すことで、ポジティブな気持ちや行動へと子どもを導きます。

 

「肯定表現」で話すにはどうすればいい?

(1)オウ厶の言葉を変えてみる

まずは子どものネガティブな感情に「そうだよね」「わかるよ」と共感したうえで、「少しだけ前向きに言い方を変えてみたらどうなるかな」とうながします。オウ厶の言っているセリフをイメージし、その後に「でも……」と続けて、どんなふうに言葉を続ければ、前向きな行動につなげられるかを考えさせるのです。たとえば「あいつのやったことは悪い」と言う非難オウ厶や正義オウムには、「でも、自分が悪いところもあるかもしれないから直すようにしよう」と続けられます。「うまくいくか不安だ」と言う心配オウ厶には、「でも、やらないよりやったほうがいい経験になるかも」。「自分にできるわけがない」と言うあきらめオウ厶や敗北者オウムには「でも、もう少しだけがんばってみよう」。そんな具合に続けていくと、ネガティブな感情がポジティブな感情に少しずつ変わっていきます。

(2)自分の肩に乗せたいオウ厶を考える

ネガティブな言葉を言ってくるオウ厶ではなく、どんな言葉をかけてくれるオウ厶がいたらいいかを一緒に考えます。「大丈夫!やればできるよ」と言ってくれる励ましオウ厶や、「よくやっているよ。リラックス、リラックス」と言ってくれるリラックスオウ厶など、自分を元気づけてくれたり、安心させてくれるようなオウ厶を、自由な発想でイメージします。

(3)「Yes,and」のマインドを大切にする

夢のような話をするとき、子どもの心はポジティブな感情であふれています。ですが大人はつい現実的に考え、「さすがにそれは無理……」と水を差してしまうことがあります。また、「それは素晴らしいアイデアだね。でも……」といったんは肯定しつつ、実現の可能性が低いなどの理由で結局は否定する言い方(Yes, but)も、子どもの感情をネガティブなほうへと導いてしまいます。

創造力の聖地、シリコンバレーでは、自由な発想やアイデアを遮断しないよう、「Yes, and」の思考が充満しているといわれています。「そうだね、それで……」と、もっとその発想を深めていくような問いかけです。子どもに対しても、「それで、どんなことができるの?」「それはどうしたら実現できるかな?」というポジティブなコミュニケーションをとることで、創造力を前向きに伸ばしていくことができます。