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2019年12月の記事一覧

PISA調査(読解力)からPart6

 幼児期から小学校低学年まで紹介してきましたが、小学校中学年の「国語力や意味がわかって読める(読解力)」ために留意することの続きを紹介します。学校や家庭でのかかわりや援助などについてお伝えします。
(中学年)
5.生活科が理科と社会に分かれ、理科ならば日光や気象、植物や天体の観察を通じて、自然の仕組みについて学んでいく。社会ならば、自分の住んでいる地区や町のことから、鹿沼市や栃木県、日本の地理や歴史へと広がっていく。産業についても学び始める。これが、「生活体験」というリアルな意味や具体例を記号列として表現された「抽象概念」につないでいく上での基礎になる。具体例を挙げさせたり、理由を口頭で説明させたりすることで、意味として獲得しているか念入りに確認したい。
6.算数で筆算が本格化する。掛け算や割り算などの筆算で、注意力が十分でないと、7と9などを区別がつくように書いたり、桁を合わせたり、繰り上がりを正しい箇所に書いたりすることにつまずきやすい。算数が苦手なのではなく、集中力をコントロールすることが難しいだけなので、つまずくようなら最初は穴埋め式でさせ、できるようになったら徐々に「補助輪」をはずしていく。集中力をコントロールしたり、手順を確認したりすることが必要な遊び(例:プラモデル、編み物、ジェンガなど)を効果がある。
7.算数で割り算や分数が始まる。これは子どもが初めて出会う「相対」という概念である。6個のりんごを3人で分けると、1人2個ずつになる(等分除)、ということはほとんどの3年生はわかる。しかし、1ドル100円が1ドル90円になったら、円高だということは大人でもわからない人は少くない。「1ドル100円のとき、90円は何ドルですか?」という相対的な考え方(包含除)は、自分を中心に世界を理解する絶対的な価値観の中で生活していた子どもにとって、極めてハードルが高い。それまで算数の計算問題で満点を取っていたのに、突然70点以下を取る場合、「相対」につまずいていることが多いので注意してみてほしい。

PISA調査(読解力)からPart5

 幼児期から小学校低学年まで紹介してきましたが、小学校中学年の「国語力や意味がわかって読める(読解力)」ために留意することを紹介します。学校や家庭でのかかわりや援助などについてお伝えします。なお、中学年のころから学力差が生じやすくなります。それは主観から客観へ、絶対から相対へ、具体から抽象へとジャンプが必要になります。
(中学年)
1.板書の分量を徐々に増やし、1時間に一度3分くらい集中して板書を写す時間を設ける。発達が遅めで時間内に写せない児童には、書く箇所を示すか、穴埋めのプリントを用意する。書ける速度を確認し、徐々に卒業できるように励ます。
2.国語以外の科目、特に理科や社会の教科書の音読をする。特に、「~を・・・という」ような定義を表す文が出てきたら、必ず全員で復唱する。また、家庭学習で行うとさらによい。
3.読書を奨励する。読書が苦手な児童には、前の日に勉強した各教科書の箇所を読むことを勧める。
4.(気持ちや状況を共有していない)第三者に正確に伝わる表現を工夫できるようになることを目指す。低学年までの子どもは主観の中で生きているが、彼らが客観を身につけるのはハードルが高い。主観で自分が見たことやしたことをそのまま文にしても背景知識や状況を共有していない第三者には伝わらない。そのため、家から学校までの道のりを説明したり、物の名前を言わずに特徴を説明することでそのものを当てるゲームをさせたりすることを通じて、客観的に説明する方法を身につけていきたい。家庭では日中の時間を共有しない保護者は自宅でのネットをオフにして、学校であった出来事を興味を持って子どもの話に耳を傾けてほしい。

PISA調査(読解力)からPart4

 小学校低学年の「国語力や意味がわかって読める(読解力)」ために留意することの続きを紹介します。学校や家庭でのかかわりや援助などについてお伝えします。
(中学年)
3.生活習慣が乱れていないか注意をする。睡眠や食事、排便がしっかりできていないと、特に集中力を必要とする作業(算数など)で脱落しやすい。朝の時間に眠そうにしていないか、小さなトラブルでパニックに陥りやすいことがないか、教員は様子を観察し、家庭と情報を共有する。
4.小学生は高学年に至るまで、発達の分散が相当に大きい。睡眠、食事、排便に気をつけていて、ネットやゲーム依存にさせず、十分に体を動かしていて、日々母語(日本語)で話しかけているなら、親ができるのはそれぐらいだとおおらかに構えたほうがいい。この時期に上手に書けない子、落ち着かない子、他の子の身になって考えられない子、教師の指示を聞けない子は、ごく普通にいる。この時期の早い・遅いは中学生以上の成績に左右しない。教員は、他の児童に危害を加えない限りは、長い目で見てあげている。ただし、放置しているわけではない。定期的に働きかけて、発達の機会を見逃さずに適切な課題を与えることで、他の児童との差を縮めるようにしている。必要に応じては、個別学習教室や通級教室の利用が求められる。これは手間がかかるように聞こえるかもしれないが、低学年や中学年で基本的なスキルの差を縮めておけば、高学年以上の指導が圧倒的に楽になる。

PISA調査(読解力)からPart3

 小学校低学年の「国語力や意味がわかって読める(読解力)」ために留意することを紹介します。学校や家庭でのかかわりや援助などについてお伝えします。
(低学年)
1.読めても、書くことが難しい子は多い。話すことと異なり、文字(書記言語)は、人類最大の「発明」である。書くことを身につけるのは自然なことではない。小学校1年生の夏休みまでに多くの子が五十音を書けるようになるのだから人間はすごい。
 長く書くことが苦痛にならない持ち方で鉛筆(2BかB)を持ち、マスの中におさまるように丁寧に字が書けているか、見守ってほしい。特に「ば、び・・」などの濁点、「ぱ、ぴ・・」などの半濁点、「きゃ、きゅ・・」などの拗音、「きって、きっと」などの促音、「おかあさん、おにいさん」などの長音、「コーヒー」などの長音符につまずく子(特に男子)は多い。学校ではMIMという特殊音節や語の区切りについて月に1回確認しています。この時期の発達は分散が極めて大きいので、焦らず、諦めずにほどよい距離で見守り、手助ける必要がある。個別学習教室や通級教室の利用も必要で、叱りつけたりドリルをさせすぎたりすると、勉強への苦手意識につながったり自己肯定感が下がるので気をつけたい。
2.「バッタがはねた」とか「カラスが電線にとまった」など、主語と動詞と目的語を使って見たことを短い文で説明できるとよい。これらに形容詞や修飾節をつけられるようになっていくと中学年でスムーズに移行できる。家庭環境の差や幼児期に多様な大人に触れているかで差が生じやすい時期なので、「何がどうした?」遊びなどを通じて、文の基本構造を理解したり、語彙を増やしたりする機会を十分与えたい。

8日 自分は大切な存在!

8日の魔法の日めくりメッセージです。

自分は大切な存在! ~手洗いうがいは大切だよ~

手洗い・うがいを通して、
自分の体を大切にする習慣を身に付けましょう。
手を洗うとは、表裏、爪の間まで気を付けること。
うがいは、喉の奥の見えない汚れを取ること。
見えていることだけにとらわれないで、
自分を大切にしましょう。

すぐに結果が見えないことでも習慣化することで、
自分というものは、外見だけでなく、
”中身も大切なんだ”と分かります。


自分を大切に出来ているようになると、
他の人・ものも大切にする事が出来るようになりますよ。


 歯の治療はお済ですか。治療中の子どもたちもいることかと思いますが、適切に処置することは、自分を大切にすることの一つです。ぜひ、早期の機会に治療をお願いします。

PISA調査(読解力)からPart2

 小学生の子どもたちに国語力や読解力をつけることが必要です。その根底には、幼児期から育んでいくことが必須になっています。あらためて、「AIに負けない子どもを育てる(新井紀子著)」を紹介します。

(幼児期)
1.身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やすこと。特に多様な年代の大人同士の会話を聞く機会があるとよい。
2.身近な大人が絵本を開いて、繰り返し読み聞かせをしてあげてほしい。幼児にとっては繰り返しが楽しい。
3.信頼できる大人に、自分は守られている、という実感を育てること。
4.社会(文字、数、貨幣、移動手段、調理など)に関心を持つようになったら、ごっこ遊びができる環境を作ったり、広告や駅名を読んでやったり、貨幣で何かを買ったり、簡単な調理を一緒にしたりする機会を増やしてあげたい。
5.日々の生活の中で、子どもが身近な小さな自然に接する時間を取ること。子どもが十分満足するまで、そのことをじっくり観察したり感じたりする時間を取ってあげたい。
6.子どもが自分の関心に集中できる時間を十分確保すること。タブレットなどによる映像でなく、具体物を使った活動ができるようにすること。
7.同世代の子どもたちと、十分に接する機会が確保されること。また、少し年上の子どもたちがすることを真似たり、憧れたりする機会が確保されること。

PISA調査(読解力)から

 12月3日(火)に「国際学習到達度調査(PISA)」の結果が公表されました。4日(水)の新聞に掲載されたのはご存じかと思います。見出しを見ると、「日本「読解力」急落15位」、「理数系上位維持」、「長文読み書き減 要因か」、「情報探し出す 苦手」、「本・新聞読む生徒 高得点」、「小中高 討論・発表重視へ」、「読解力 転落ショック」、「SNS世代 読むより反応」などがありました。
 日本の読解力が急落したのは、「子どもたちの言語環境が急激に変わり、読書などで長文に触れる機会が減った」ことを文部科学省の担当者は述べています。子どもたちの言語環境が急激に変化したことは、スマホやSNSといった環境の変化があげられます。「この公園には滑り台をする」という文章が予備校で提出された要約文だそうです。主語や述語が不明確で意味が通じない文や、すべてに「、」をつなげ、1文で書く高校生もいるとのこと。この原因の1つにSNSの普及があると言われています。スマートフォンを使って、短文でのやりとりできるラインは、単語や略語だけの「話し言葉」で通じてしまいます。また、そのときの気分を「スタンプ」を使えば、感情を言葉にする必要もありません。このように、「正しく書かなくてもいい」環境も生まれたことが、言葉の乱れにもつながっているようです。
 また、本の種類にかかわらず、本を読む頻度は、2009年と比較して減少傾向にあります。読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒の方が、読解力の得点が高いという結果も出ています。中でも、フィ クション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力の得点が高くなっています。

AIに負けない子どもを育てるためにPart13

⑦-2具体例同定(理数)の問題(普通)
以下の文を読みなさい。

 3つの文字abcを用いた文字列で、次の(1)と(2)を満たすものを考える。
 (1)最初の文字はaである。(2)同じ文字が2つ以上続くことはない。

上記の文の(1)と(2)を満たす文字列を選択肢の中からすべて選びなさい。

① abcba  ② abbca   ③ bcacb   ④ abcde

 正解は、①になります。この具体例同定能力が十分に伸びていない状態で中学校に入学すると、中学校の学習につまずきやすくなりますと言われています。例えば、偶数の定義を学んだ6年生でも半数の子どもたちは読めません。「2,4,6,8、・・・のような整数を偶数といっても、-110はどうか、0はどうか、という判断できません。「2で割り切れる整数を偶数という」とか、「2の倍数であるような整数を偶数という」という定義を使わないと、正確に伝わりません。
 

AIに負けない子どもを育てるためにPart12

 具体例同定(理数)の問題は、具体例同定(辞書)と同様に、定義を読んでそれを合致する具体例を認識する力を測定するものです。

⑦-1具体例同定(理数)の問題(易しい)
以下の文を読みなさい。

 1とその数以外の約数をもつ数を合成数という。

合成数の例として正しいものを選択肢の中からすべて選びなさい。

① 1   ② 2.2   ③ 0.6   ④ 9

 正解は、④になります。合成数は、
1とその数以外の約数をもつ数ですから④になります。

AIに負けない子どもを育てるためにPart11

 小学校に入学すると、「定義」という言葉は使わなくても用いられる場面がたくさんあります。生活で使う生活言語から学習で使う学習言語に変わるのが2年生の後半から3年生前半で移行していきます。

⑥-2具体例同定(辞書)の問題(普通)

 ある者が他の者に対して一定の行為を請求しうることを内容とする権利を債権といい、財産権のひとつである。例えば、お金を貸した人に対して、お金の返済を請求できる権利は債権である。

「債権」にあてはまるものを選択肢の中からすべて選びなさい。

①友達に貸した本がなかなか返ってこない。早く返してほしい。
②今月の給料が支払われない。きちんと払ってほしい。
③提出期限になっても、なかなか宿題を提出しない生徒がいる。早く提出してほしい。
④友達に借りた金を月末までに返さなくてはならない。

 正解は、①、②になります。「債権」の定義を読んで、それを合致する具体例を認識する力を測定しています。