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2019年11月の記事一覧

算数の苦手な子のために(計算すること)part5

 例えば、7+8を考えると、タイプによって以下の2つの方法を考えます。継次処理優位(情報を1つずつ系列的かつ時間的に処理する能力が高い)あるいは聴覚認知優位のタイプの子どもの場合は、10の合成分解や10の補数関係を軸にした半具体物の操作を行わせます。

 視覚認知優位、同時処理優位(複数の情報を全体的かつ空間的に処理する能力が高い)の子どもには、5の合成分解や5の補数関係を軸にした半具体物の操作を行うことで計算のしかたを理解させます。

 今、2年生は九九を覚えていますが、九九を覚える方法として、九九を唱えて覚えるという優れた手法があります。見ることよりも聞いたことを覚えやすい聴覚優位な子や継次処理が優位な子には、「九九を唱える」という方法は有効です。

 しかし、聞くことよりも見たことを覚えやすい視覚優位の子や同時処理優位の子には、言わせて覚えさせることは有効ではありません。九九表のような2次元空間に九九の計算式の情報を全体的に示す方法で覚えることができます。例えば、「右端の縦の列は、どんな式が並んでいるかな?」「斜めには、どんな式が並んでいるかな?」などと、どの式がどの辺りにあるのかをじっくり観察させ、場所で覚えることが適しています。

算数の苦手な子のために(計算すること)part4

 計算の困難は、小さい数の計算(暗算)の問題と大きな数の計算(筆算)の問題に分けられます。小さい数の計算(暗算)は、和が20までのたし算・ひき算、九九の範囲のかけ算・わり算を指します。一方、大きい数の計算は、それらの範囲を超える計算(筆算で答えを導き出す計算)を指します。

 マクロウスキーは、暗算には「数的事実」が関係し、筆算には「計算手続き」が関係していると言っています。

 「数的事実」とは、たし算、ひき算、かけ算、わり算における基本的な数の関係をいいます。例えば、以下のような数の組み合わせです。

  7+8=15、15-7=8ならば(7,8,15)

  2×7=14、14÷7=2ならば(2.7.14)

 暗算では、このような数的事実が計算のときに正確に記憶され、保持され、引き出されなければなりません。暗算に問題のある子どもは、ブロックなどの具体物を操作して計算のしくみを理解するところでの問題、頭の中でイメージ操作するところでの問題(ワーキングメモリに関係)、シンボルの組み合わせ(数的事実)の記憶に関する問題などが考えられます。

算数の苦手な子のために(計算すること)part3

 数を具体物から半具体物へと、半具体物の表象をつくるには、大きく分けて2つの方法がある。1つは図1のように10という単位を強調して、ドットを横に10個並べる方法です。10を横に並べることは、10進法の原理を見えやすくなります。聴覚的な情報を手がかりにできるタイプの子には、「イチ、ニ、サン、・・・・・・キュウ、ジュウ」とすべて異なる音で表せる10までの数詞と、10個を横並びにおける教材がマッチングさせることで、数のイメージがつきやすくなります。
 具体物(星)      半具体物        数字

          図1
  ★ ★     ● ● ● ● ● ● ● ● ○ ○
 ★   ★ ★  ⇒   図2       
 ⇒ 8
 ★ ★ ★       ● ● ● ● ●
    
           ● ● ● ○ ○
 
丸は半具体物の数、白丸は10の補数を表します。具体物を見せて、カードとマッチングさせます。動かせるばらばらのドットや積み木と対応させるだけではなく、10の並びの中で対応させることが必要です。ドットの並びのイメージをきちんと頭の中で再生できるようにすることが大切です。 もう一つは図2のように、10までの数を5という、より小さな見えやすい単位に区切り2段に表すのは、5という単位が見えやすく、数詞という聴覚的な手がかりよりも、視覚優位または同時処理優位な子どもには有効であると考えられます。カードと一対一対応で結びつけることができるようにしていきます。 

算数の苦手な子のために(計算すること)part2

 今回は小さな数の計算が苦手な子について考えてみます。

 例えば、いつまでも指を使って計算している子や、計算に時間がかかる子、4+3や5+1がすぐにできない子、2+3はできているのに、3+2は指を使っている子などがいます。
 このようなことが1つでもある子の
つまずきの背景は、【計算する】ことの発達段階のうち、具体物に依存して数えたす・数えひくという方略の段階にあると考えられます。子どもは次第に計算の式と答えのパターンを数的事実として記憶し、式を見ると答えが記憶の中から素早く出てくるという自動化の段階に進みます。この段階に移行する年齢は、個人差が大きく、1年生で見つけることは難しいと言われています。しかし、よく観察していると、「〇+1」のような簡単な計算にも指を使っているという特徴があります。

 このような計算の前段階での指導では、子どもが具体物を数というシンボルに結びつけるために、具体物から半具体物への変換、半具体物から数への変換を行う必要があります。ゾウが5頭もアリが5匹も同じドットの5であるという変換を行います。

 10までの数は、とにかく具体的な物に結びつきやすいです。指で計算すると、1から10までを指に対応させて操作するという具合です。これでは、数という抽象的なシンボル操作にたどりつかない状況です。計算を指導する前に、数を頭の中でイメージして操作できるように、半具体物の表象を作っておかなければなりません。


算数の苦手な子のために(計算すること)

 計算や推論することの苦手なタイプを知ることで、対応のしかたを知ることができます。計算のなかで、数処理(数の変換)が苦手な子について考えてみます。
 例えば、
5と言いながら3本の指を出している子、ものをよく数え間違えている子、「ひゃくいち」と言われたものを1001と書く子、4501を読めない、また「よん・・ごじゅう いち」などと読む子がいます。

 1つでも苦手な子のつまずきの背景は、認知的な困難さがあると考えられます。聴覚的な記憶力や継次処理能力(順序だてて処理する力)に困難なために数詞の系列を正確に覚えられません。また、目と手の協応や視覚的な短期記憶力が弱いために、ものがどれだったのか覚えられません。不注意の問題があることも考えられます。
 
数処理とは、数詞、数字、具体物の対応関係が習得されているかどどうかです。同じ3という値でも、その言い方が同じ3という値でも、その言い方「さん」、書き方「3」、それらを指す「具体的な物が3個」というマッチングができていなければ、数概念は成り立たちません。
 その指導では、数詞、数字、具体物(あるいは数空間)の対応関係が成立しない場合、「すごろく」による指導が考えられます。サイコロの目(ドットや数字)を声に出して、1つひとつこまを動か(操作)していくことで、対応関係を結びつけやすくなります。
 大きな数をサイコロの目にすることもできます。例えば、2,4,6,8,10などの
偶数や、5,10,15,20,25,30などの5とびなど、子どもが習得しにくいところに焦点を当てるように工夫すると理解しやすくなります。遊びながら数について学ぶことがとても大切です。